•  けふひと日の熱を湛へて戻り来し電車の窓にほのか黄昏 うめきたる車輪の軋み聞きをればこの国を這ふ鉄路の無限 吐き出さるる衆人を呑み地下街は静脈のごと疲れを運ぶ 側溝をほつと立ちくる白き湯気たれの吐きたる溜息なるや 高層のホテルラウンジ煌々と散りゆく人の上(え)に君臨す 滲みゐし光が尖り中空を射貫きて街は夜を纏へり バス停の列に並べば一日のあれこれ詰むる鞄は重し 居酒屋のチラシ配りの青年も拠りて立つ... 続きを読む
  •  一心に上りゆく蜘蛛迎へむと軒端に深き雲のふところ 青椒(ピーマン)の赤く熟れたる実のひとつ夏の記憶を今に留めむ 秋来ぬと知るや知らずや蔓のべて生ひし西瓜の縞目あざらか やうやうに巡り来たりしこの季(とき)を自在に伸びよ御柳梅そは 弓なりに撓みて土に触れなむと上つ枝に柿の六つ犇めきて 裏白の落葉かさこそささめきて占ひをるや風の行方を 薄氷のごとくはかなき昼月を呑み込みてゆく雲の隊列 釣り人の去りし... 続きを読む
  •  母よ母 もの言はぬ母 動かぬ母 その温もりを掌に受く いくたびも死線を越えて長らふる母の瞳に映る我あり 目が合へばふふふと低き笑み浮かべそれのみをして面会を終ふ    Kindle本「私史心象」販売中     光さす方へ~SSIRからの脱却~                       #短歌 #和歌 #連作 #エッセイ #長歌 #古典 #随想... 続きを読む
  •  まだ早き冬の稲妻ひらめきて君を浚ひき秋止符うちて    深々と憂ひをまとふ秋えんじゅ ともに悼まむ帰らざる日々 荒野へと向かふ道こそ険しけれ名にし負ひたるチャンピオンとて 昴へと至らばそつと目を開き残りし者を見届したまへ 幸せを探しにわれも旅立たむ君が賜ひし歌を道づれに    Kindle本「私史心象」販売中     光さす方へ~SSIRからの脱却~                       #短歌 #和... 続きを読む
  • 直線を描き飛び去る白鶺鴒そのためらひに白黒つけよとかげろふは早や旅立ちしかな波の上(へ)に来世の夢を紐解きながら羽根帚もてくすぐらばこの窓に堕ちてきさうなオリオンの夢上澄みをそつと掬ひて希望とふラベルを貼りて日に透かし見るゆくりなく辻より風は立ちにけり黄金色の香を孕みつつ葉は天を穂先は地をぞさしにけり国のまほろばここにこそあれ    Kindle本「私史心象」販売中     光さす方へ~SSIRからの脱却~... 続きを読む

光畑昌子(Masako Mitsuhata)

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